最後の夜に、どれだけ飲みますか
「マスターは、最後の一杯は何を飲みますか」
カウンターの向こうで、そんな質問をいただくことがあります。人生の最後や、あるいは今日という一日の終わり。もしもすべてが終わりを迎える夜が来たら、最後に何を口にしたいのか。少しロマンチックで、どこか切ない問いかけなのだと思います。
バーボンにするか、それとも日本酒やワインにするか。銘柄や種類を真剣に考えてしまう場面ですが、ふと、それよりも先に気になることがありました。何を飲むかという銘柄よりも、私たちは「どれだけの量を飲むのだろう」という時間のほうが、気になってしまうのです。
「最後の夜に、どれだけ飲みますか」と逆に尋ねてみたとき、自分でも少しおかしくなりました。もし本当にそんな夜が訪れたなら、きっと私は、死ぬまで飲み続けるのだろうと思います。
かっこいい答えでも、美しい美学でもありません。ただグラスを傾け、氷が溶ける音を聞きながら、いつものように時間を忘れて杯を重ねていく。終わりが来ると分かっていても、きっとグラスを放すことはない気がしています。
お酒の銘柄にこだわるのも素敵ですが、結局のところ、好きなお酒と過ごす時間がどれだけ愛おしいかということなのだと思います。今日もこうしてカウンターに立ちながら、そんな終わりのない夜に思いを馳せているのです。