エイティーサード

83番目の棚に、酒と言葉を並べる。

横浜の静かな片隅に佇む、たった10席だけの小さなバー。

苦手だったゆで卵と、静かなバーで仕込むおでん

おでんに欠かせない、昔は苦手だった「ゆで卵」

当店で毎日ご提供しているおでん。おでんには無くてはならない3つのタネがあると言われます。大根、たまご、こんにゃく。多くのお客様からもご同意いただきますが、実は店主の心の中では少し複雑な想いもありました。

というのも、子供のころから長年にわたり、ゆで卵が最も嫌いな食べ物だったからです。硫黄のようなにおいがどうしても苦手で、大人になってからも、おでん屋で盛り合わせを頼むときは「玉子は別皿で」とお願いするほどでした。出汁に黄身が流れ出るのが許せなかったのです。

おでんの出汁が教えてくれた美味しさ

そんな長年嫌いと言い続けてきたゆで卵を克服したのは、とあるおでん屋さんでした。なぜ食べてみようと思ったのかは記憶にありませんが、おでんの出汁が染み込んだゆで卵を、心から「美味しい」と思えるようになっていたのです。

もともと半熟の目玉焼きや温泉卵は大好きだったので、ゆで卵の克服には、美味しいおでんの出汁が必要だったのかもしれません。今では懐かしい思い出です。

仕込みの失敗と、深夜のささやかな賄い

しかし、長年敬遠してきただけに、いざ自分でゆで卵を作るとなると経験不足は否めません。お湯から茹でるのか、水からか。硬さをどうするか。おでんに合うように試行錯誤が続いています。

本日も仕込みをしましたが、丁寧に扱っているつもりでも途中でヒビが入って割れてしまうものがあります。今日も脱落した玉子が2個ほどあり、それが深夜の店主の賄いとなりました。ゆで卵を食べられるようになっていてよかったと思う、静かな夜のひとときです。