エイティーサード

83番目の棚に、酒と言葉を並べる。

横浜の静かな片隅に佇む、たった10席だけの小さなバー。

バーボンと、いつかのウォッカマティーニについて

私たちがバーボンを集めていたのは、アメリカのカルチャーに深く染まっていたからなのだと思います。当時を振り返ると、アメリカという存在そのものが、自分にとっての青春の塊でした。ショットグラスでバーボンを勢いよく煽り、そのチェーサーとしてビールを合わせる。そんな飲み方を好んでいました。

決めた銘柄をいつまでも裏切らずに飲み続けるのは、ビリヤードをしながら夜な夜な仲間と遊んでいたころの記憶が蘇るからかもしれません。アメリカの空気感にどっぷりと浸かっていたからこそ、お店の軸としてもバーボンを中心にしたかったのです。

ただ、数年前に訪れた上海のバーで、ふと頼んだウォッカマティーニが驚くほど美味しかったという思い出もあります。あの時、バーテンダーにウォッカの銘柄を尋ねたら、ロシア産のプレミアムウォッカだと言われました。その味わいがずっと心に残っています。

ウォッカというお酒にも、私なりの原点があります。アメリカで暮らしていたころ、お世話になったホストファミリーにはロシア人のバーブシュカ、つまりおばあちゃんがいました。そのおばあちゃんと直接お話ししたくて、当時の私はロシア語の勉強を始めたほどです。

まだロシアの地を踏んだことはありませんが、当時の経験を通じてロシアの文化にも強い興味を抱くようになりました。いつか当店でも、あの時出会ったようなロシア産のプレミアムウォッカを使い、しっかりとシェイクしたマティーニをお客さまにご提供できたらいいなと思っています。アメリカの青春から始まったお酒の記憶が、少しずつ形を変えて今のカウンターへとつながっているのかもしれません。