夏の三連休二日目は、あいにくの雨で始まった。
朝から降り続く雨粒は、アスファルトを濡らし、みなとみらいの街並みに少しだけ静けさを運んでくる。夏の陽射しが恋しくなるほどの灰色の空。だが、こんな日にも変わらず灯るバーの灯りは、まるで港の小さな灯台のように感じられる。
夜、ドアベルが鳴った。
顔を上げると、仲の良い友人が、会社のメンバーを連れて立っていた。雨で濡れた肩を軽く払いながら、「お祝いも兼ねて来たよ」と笑う。
こういう瞬間、マスターというより、ひとりの人間として胸が温かくなる。
カウンターにはグラスが並び、氷が音を立てて沈んでいく。話題は仕事のこと、最近の出来事、そして思い出話へと移ろっていく。雨音がガラス越しに響くなか、店の中だけは別世界のように穏やかで、笑い声が静かに積み重なっていった。
外はまだ雨が降り続いている。だが、その夜は雨も悪くないと思えた。大切な人たちが訪れてくれた夜は、天気すらも心地よい演出に変わってしまうのだから。