thanks

今日のひとこと(2025年8月7日)

2025.8.7 Thu.

今日は日が暮れても、なお蒸し暑さが残っていた。
まるで太陽が地面に残した熱が、夜になってもまだ街を包み込んでいるような、そんな夜だった。

このところの暑さは、少し異常だと思う。
おそらく、それを感じているのは私だけではないはずだ。
だからこそ、当店では冷蔵庫でしっかりと冷やしたおしぼりを用意している。
手にした瞬間、ひんやりとした冷気が指先から体に沁みて、ほんのわずかでも現実の暑さを忘れさせてくれる。
店内のエアコンも、他の店に比べれば少し低めの設定。
外から入ってきたとき、ほんのり「涼しさ」に驚いてもらえるくらいがちょうどいい。

21時を回った頃だっただろうか。
扉が開き、久しぶりのメンバーさんが会社の同僚らしき方とともに来店された。
グループの会話は仕事の話で持ちきり。
私はカウンターの内側で静かにグラスを磨き、必要に応じて酒をつくる。
こういうとき、私の役目は「話すこと」ではなく「支えること」だと思っている。
まるで影のように、必要なときだけ現れる存在として、静かに夜の流れを見守るのだ。

やがて日付が変わる少し前、店の外のネオンがまばらに消え始めたころ、ひとりの常連のお客様がふらりと現れた。
少し酔った様子で、手にはスマートフォン。
「迎えの車、ここで待たせてください」
そう言って、彼はいつもの席に腰を下ろす。

このお客様にとって、当店は「帰る前のひと休みの場所」。
きっと、そういう使い方も悪くない。
バーとは、ただ酒を飲む場所ではない。
思いを整えたり、静かに待ったり、ひとりでいられる時間を確保する場所でもあるのだと思う。

今日は少しパタパタと動いた一日だった。
でも、心地よい疲れがある。
メンバーさんごとに異なる「当店の使い方」。
そのひとつひとつに、店の意味がある気がする。
そう、ここは「bar」でありながら「居場所」でもあるのだ。