バーボン棚の片隅で、山崎12年が選ばれる理由
うちの店はバーボンをメインに据えて棚を作っている。色とりどりのラベルが並ぶその景色は店主である私のこだわりでもあるのだが、不思議なことに、時折そうしたこだわりとは別のボトルに注文が集中することがある。その代表が山崎12年だ。
バーボンがメインの空間で、なぜジャパニーズウイスキーである山崎がこれほど自然に選ばれるのか。考えてみれば、そこにあるのは特別なしつらえではなく、多くのお客さんにとっての「飲み慣れた安心感」なのだと思う。
我が店に足を運んでくれる客層は、比較的年齢層が高めだ。これまで様々な酒を飲み、自分の好みの軸足をしっかり持っている人たちが静かにグラスを傾けている。そういう人たちが一日の最後に選ぶのは、冒険よりも、かつてから知る確かな味わいなのかもしれない。
メインの棚にあるバーボンの力強さもあれば、こうした日本のシングルモルトが持つ馴染み深さもある。83番目の棚に並ぶのは、酒そのもののラベルだけでなく、その日を過ごした客たちの記憶や、今求めている空気感そのものなのだろうと思う。