今日も氷と向き合う時間が、思った以上に長く続きました。
 グラスに氷を落とす音だけが、静かな空間に響いていて、まるで店の中に時間だけが取り残されているようでした。
月末とは思えないほど、街は静かでした。
 関内の通りを行き交う人もまばらで、時計の針の音すら聞こえてきそうな、そんな夜です。
3時間──もしかするとそれ以上、
 私はカウンターの内側で、まるでお地蔵さんのように、じっと固まっていました。
 何も考えず、ただ、そこにいるだけの時間。
 Barの灯りは、誰の目にも届かないまま揺れていました。
けれど、そんな沈黙の中に、ふと扉の音が響きました。
 顔を上げると、同業の知人が立っていて、その姿を見た瞬間、心の中にふっと温かい風が吹いたように感じました。
グラスを傾けながら、街の話やお互いの店の話をしました。
未来のこと、これからのこと、
 不安もあれば希望もあり、でも最後には「また頑張ろう」と思えるような、
 そんな穏やかな会話でした。
Barという場所には、こういう時間が流れているのだと、
 あらためて感じた夜でした。
明日もまた、氷と静かに向き合う時間がやってくるかもしれません。
けれど、こうして誰かがふと顔を見せてくれるだけで、
 私はまた、扉を開ける準備ができるのです。

 
  
  
  
 