巨人がオリックスに惜敗したその夜、私は京セラドームの余韻を引きずったまま、電車に揺られて神戸に向かった。何度も通った道、馴染んだ駅、そして、いつもの宿。
「おかえりなさい」
駅の改札で待っている彼女が笑っていた。もう40年近い付き合いになる。久しぶりでも、そう思わせないのが彼女の良さだ。初めて会ったあの夜から、時は流れても、空気は変わらない。
一息ついたら、いつものように街へ出る。繁華街の灯りは眩しく、だけどどこか懐かしい。まずはお好み焼き。分厚い鉄板の上で、ソースがじゅうじゅうと音を立てる。ビールで喉を潤しながら、目の前で焼かれていく豚玉を見つめる時間が好きだ。
「よう来たな。また野球か?」
いつもの店主が、目だけで笑ってくれる。
二軒目は明石焼きの店。熱々の玉子のふわふわを、出汁にくぐらせて頬張る。口の中でふわりとほどけるたび、胸の奥がじんとする。言葉はいらない。ただ、黙って隣の彼女と酒を酌み交わす。
三軒目、四軒目は居酒屋をはしごした。どちらもカウンターだけの小さな店。酔客たちの笑い声と、焼き魚の香ばしい匂い。焼酎の水割りを片手に、他愛ない話を交わす。
「もう、よく飲むねぇ」
「昔ほどじゃないよ」
「ふふ、そう言って、いつも最後まで飲んでる」
そうして夜は更けていった。
見上げると、神戸の空はやけに澄んでいて、まるで何かを思い出させようとしているかのようだった。
帰り道、石畳の音がコツコツと響く。振り返ると、彼女は変わらずそこにいた。昔と同じように、ちょっと先を歩いては、ふと立ち止まって振り返る。
変わらないものが、ここにはある。
神戸の夜は、そういう街だ。
巨人がオリックスに惜し〜いとこで負けたその晩や。
京セラドームの余韻、まだ残しとるまま電車に揺られて、神戸向かったんよ。
何べんも通った道やし、見慣れた駅や。ほんで、いつもの宿。
「おかえり〜」
駅の改札で待っとった彼女、にっこにこ笑っとるわ。
もうかれこれ40年近い付き合いや。久しぶりでも、そんなん全然感じさせへんのが彼女のええとこや。
初めて会うたあの夜から、年月は流れても、空気は変わらへんのやなぁ。
一息ついたら、ほな街出よかってなるやん。
繁華街の灯り、ギラギラしてるけど、どこか懐かしいねん。
まずはやっぱお好み焼きやろ。
分厚い鉄板の上で、ソースがじゅ〜じゅ〜音立ててる。
ビールで喉潤しながら、目の前で焼かれてく豚玉見とるだけで幸せや。
「おぉ、来たんかいな。また野球か?」
いつもの店主、目ぇで笑うてくれんねん。あの感じ、好きやわぁ。
次は明石焼きや。
熱々でふわっふわの玉子、出汁にちょろっと浸けてパクッといったら、
口の中でふわ〜っととろける。ほんま、胸ん中まであったまるわ。
言葉なんかいらん。ただ黙って、隣におる彼女と酒飲んでるだけでええねん。
三軒目、四軒目と、ちっこい居酒屋をハシゴしてな。
どっちもカウンターだけのアットホームな店。
酔っぱらいの笑い声と、焼き魚のええ香りがふわ〜って漂うててな。
焼酎の水割り片手に、他愛もない話で盛り上がんねん。
「もう〜、よう飲むなぁ」
「昔ほどやないで?」
「ふふ、そない言うて、結局最後までおるやんか〜」
そないして夜はどんどん更けていくんや。
見上げたら、神戸の空、妙に澄んどって、なんやいろんなこと思い出させるねん。
帰り道、石畳をコツコツと歩く音が響く。
ふと振り返ったら、彼女、変わらずそこにおるんよ。
昔とおんなじように、ちょい先を歩いて、ふいに立ち止まってこっち振り返る。
変わらへんもんが、ここにはある。
神戸の夜って、ほんま、そんな街やねん。